売買百景(3) ある友人の話
2021/01/23
高校時代の野球部の友達のお話です。
靴の製造に関する仕事を2代目でやっておりました。
しかしながら、26年前の阪神大震災で周辺は全焼。
その当時から、神戸は復興と遂げてきましたが、靴産業は斜陽産業となっていきました。
2年前のある日連絡が入り、「もう立ちいかなくなる。破産を検討中」との話を聞きました。
子供さん達はもう成人されていますが、生真面目な性格で事業継続に多額の借金がありました。
しかしながら、持ち家は住宅ローン以外何も抵当権が付いていなかったため、売却資金で助けてくれた人に借りたお金を返したいとの申し入れ。
これは、やり方を間違えると、売却する前に破産宣告をすると、財産すべては差し押さえになるため、ことは慎重に。
まず弁護士に相談をし、一般の売買では時間がかかるために、不動産買い取り業者に連絡をして、査定金額の一番高いところに売却。それと同時に、お母様と2人で住める賃貸住宅の案内をし、すべての荷物の移してしまってから、破産手続きに入ってもらいました。
2年後の昨年夏に久しぶりに会いました。2年前には見れなかった笑顔が見れました。
破産をする。家を手放す。何かマイナスのイメージが付きますが、何も犯罪を犯しているわけでなく、人は生きていく生存権をもっています。何も死ぬことはありません。
彼は過去を反省し、また新たな人生を踏み出したお手伝いができたことが嬉しいです。
不動産は、喜びの仕事ばかりではありません。辛い場面に寄り添ってその方に光を見出すお手伝いをするのも私たちの仕事なのです。